klinefelter_news’s site

Klinefelter Syndromeに関する研究やニュース 論文発表年をカテゴリーにしている

日本の症例

SGLT2阻害薬の使用により高用量インスリン療法から離脱し得たKlinefelter症候群に合併した糖尿病の一例

第90回日本内分泌学会学術総会 2017年

https://confit.atlas.jp/guide/event/endo90/session/P91/detail?lang=ja

 

高度のインスリン抵抗性を示したKlinefelter症 候群の 1 例 2014年

千葉医学会例会

https://core.ac.uk/download/pdf/97063426.pdf

 

東京レントゲンカンファレンス 糖尿で入院

https://trc-rad.jp/case/353/s2/353_2_2.html

下肢に散見される静脈石とある。静脈血栓症のリスクが高いことも知っておく必要があるとのこと。2014年

 

バリズムを契機に糖尿病の診断に至ったKlinefelter症候群の1例 2013年

https://ci.nii.ac.jp/naid/130004511372

 

Klinefelter 症候群にみられた難治性下腿潰瘍の 4 例  2011年

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsvs/20/4/20_4_711/_pdf

 

高度の肥満とコントロール不良の糖尿病を合併したKlinefelter症候群の一例

日本糖尿病学会中部地方大会2003年

 

著しいインスリン抵抗性を呈し, チアゾリジン誘導体により糖尿病が改善したと考えられるKlinefelter症候群の1例

2002年 糖尿病

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo1958/45/10/45_10_747/_article/-char/ja/

 

糖尿病を合併したKlinefelter 症候群の一例 1998年

https://www.boehringer-ingelheim.jp/sites/jp/files/documents/jinen/14/no_28_06.pdf

 

 

クラインフェルター症候群と循環器・血栓疾病

MANAGEMENT OF ENDOCRINE DISEASE: Klinefelter syndrome, cardiovascular system, and thromboembolic disease: review of literature and clinical perspectives

DOI: https://doi.org/10.1530/EJE-15-1025

これまでに発表された研究データをまとめたレビュー

 

メタボリック症候群はKSで多いことが分かっているが、これがテストステロン補充療法で必ずしも改善されないという結果になった。

メタボや体脂肪(特に体幹)の増加は、性ホルモンの欠乏とは別の因子が絡んでいる可能性がある。

可能性として考えられるのが、免疫である。近年肥満と免疫の関係が注目されているが、KSでもこの観点から考える必要があるかもしれない。慢性炎症状態

サイトカインCCL2の過剰発現。CXCL10には違いがない。

糖尿病に関してリスクが1.6ー7倍高くなる。過去のデータではテストステロン補充療法では改善されないという結果になるが、処置がどれくらい適切に行われたのか、どれくらいの期間なのか、この点は今後も検討すべきである。

内臓脂肪過剰蓄積状態において過剰産生される C-reactive protein( CRP)がKSではベースラインが上がっているとの報告がある。CRP動脈硬化性疾患のリスクマーカーでもある。これはテストステロン補充療法で顕著に低下と報告あり。

レプチンは脂肪細胞で作られる満腹ホルモンであるが、KSでは増加している。

 

テストステロン補充療法を受けているKSではQTインターバルが短い傾向がある。
Short QT 症候群は 1999 年にはじめて報告され、典型例では著明な QT 時間の短縮(< 300/>ms)と心房細動の合併,および家族性Short QT症候群は心室細動を惹起し,心臓性突然死を来たすとされている。
テストステロン補充療法の注意点である。

 

KSは心不全のリスクが高く、先天性の心臓疾患を持っている可能性も高い。

血栓症が起こりやすい。難治性静脈潰瘍。
テストステロン補充療法が血栓症に効果があるかどうか、今のところ定かではない。

 

現在のところ、KSの心臓・血管系疾病は性ホルモンがメインファクターなのかどうか、はっきりしない。どちらかというと、性ホルモンとは別の因子がメインファクターだと著者は考えているが、テストステロンの存在量というより、放出リズムが重要なのかもしれない、と言っている。

内分泌内科等の専門医のフォローアップが必要なのは言うまでもない。

 

 

クラインフェルター症候群に対するレビュー

Recent advances in managing and understanding Klinefelter syndrome

Latest published: 28 Jan 2019, 8(F1000 Faculty Rev):112 (https://doi.org/10.12688/f1000research.16747.1)

 

クラインフェルター症候群には、古典的にコレと言えるような表現型がない。非常に症状が重い場合以外は、見分ける指標が無い。

ネットなどで書かれている「高身長、長い手足」は必ずしも一般的ではなく、思春期前の児童の発達の遅延などで見つかる場合もあるが、多くは標準域のなかで成人し、結婚後の不妊治療で診断される。

この診断の遅れが、多くの疾病リスクを抱えるKSにとって大きな問題となる。

 

高身長はSHOXの増加が関与している(SHOXはpseudoautosome領域に存在し、Xistの抑制を受けない)。

 

KS患者は循環器(心臓、血管)、脳内血管、メタボリック症候群など複合的な疾病リスクがある。

動脈弁の奇形、血栓(pulmonary embolism)、末梢血管の病気、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis)、静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism)による死亡率が高い。そのため、KS患者に対する血栓症のスクリーニングが必要である。

心室の拡張期の機能異常、僧帽弁逸脱、頸動脈の内膜の肥厚化もしばしばみられる。エクササイズには注意が必要である。

メタボリック症候群になる率が高い。体脂肪、胴回り、インスリン抵抗性、トリグリセリド、LDLの増加がみられる。

骨密度の低下も多くみられる。

 

KSは胎児時代の初めの数か月でX由来の遺伝子増幅により、精子形成の前段階 pre-spermatogonia の発達が阻害される。

 

末梢血からのgenome-wide DNA methylation and genome-wide RNA-seq が2018年に行われ、その結果明らかになったのは
まず女性との比較では、X染色体に11個の異なるメチル化領域があった。
男性との比較では、常染色体に168個の異なるメチル化領域があった。85個の遺伝子に相当した。

発現パターンでは31個の遺伝子がコントロール男性とは異なり、内訳は23個の常染色体と、7個のX由来のncRNAだった。

X染色体と常染色体いずれにもエピジェネティックな変化が起きていた。

 

エピジェネティックな変化が遺伝子発現と相関しているかどうかは定かではなかった。これがKS患者の示す症状の原因になっているのか、それとも余分なXが存在することによるエピジェネティック制御の乱れから染色体自身が自衛した結果なのかもしれない。

KS患者間に個人差が大きいことは、エピジェネティックなものが関与している事は明らかであり、さらなる研究が必要である。

成人クラインフェルター症候群患者の精巣RNAseq

Transcriptome analysis of the adult human Klinefelter testis and cellularity-matched controls reveals disturbed differentiation of Sertoli- and Leydig cells

doi: 10.1038/s41419-018-0671-1

 

様々な症状・病気を起こすクラインフェルター症候群であるが、ほぼ全員が不妊になる。それは思春期に精巣の退化が起きるからである。

そのメカニズムを明らかにするために精巣組織のRNAseq解析を行ったところ、235個の分化特異的な転写物(DETs)をみとめ、それらにノンコーディングRNAが多いことがわかったが、Xistを除くとほとんどがX染色体由来ではなかった。

 

正常46XY男性の精子形成、および Sertoli cell-only-syndrome、Leydig cell hyperplasia (過剰形成)との比較を行った。

クラインフェルター症候群ではセルトリ細胞とレイデイッヒ細胞の成熟が乱れている。そして生殖細胞は初期発生の段階でロスが始まっていると考えられる。

 

(非常に多くの遺伝子発現が46XY成人に比べて変化している。当たり前だが衝撃的であった)

DACH2 X染色体上の遺伝子 which encode a protein similar to the Drosophila protein dachshund, a transcription factor involved in cell fate determination in the eye, limb and genital disc of the fly. 

未熟なセルトリ細胞のマーカー(KSにあるが46XY成人では見られない)

FAM9A 未熟なLydigのマーカー(KSにあるが46XY成人では見られない)

 

JAK3 Janus kinase (JAK) family of tyrosine kinases involved in cytokine receptor-mediated intracellular signal transduction. It is predominantly expressed in immune cells and transduces a signal in response to its activation via tyrosine phosphorylation by interleukin receptors

GLI1  Kruppel family of zinc finger proteins. shhシグナルで活性化

KSではJAK3とGLI1がともに正常に制御されていない。

  

アンドロゲン・レセプターCAGリピート

アンドロゲン(男性ホルモン)のレセプター(AR)のCAGリピート長とクラインフェルター症候群患者の重篤度には正の相関が認められる。

Androgen Receptor CAGn Repeat Length Influences Phenotype of 47,XXY (Klinefelter) Syndrome

https://doi.org/10.1210/jc.2005-0432

 

ARのCAGリピート(ポリグルタミン)の長さにはポリモルフィズムがある。

リピートが長いほどレセプター活性が鈍る。

クラインフェルター症候群(KS)患者の重篤度は、このリピートの長さと相関している。リピートが長いほど症状が重くなる。

KSはそもそも低アンドロゲンなので、ARの活性が弱いと、さらなる追い打ちになるのだろう。

 

KSは骨粗しょう症のリスクが高いが、骨密度もARのCAGリピート長と相関している。

 

 

 

ロンドン Klinefelter Syndrome専門クリニック

クラインフェルター症候群の専門クリニックがロンドンに開設されました。

https://www.guysandstthomas.nhs.uk/our-services/urology/specialties/klinefelter-syndome/overview.aspx

 

クラインフェルター症候群(KS)は、XXYという性染色体トリソミー(Xがもっと多い場合もあるが多くはXXY)が原因で、多くの症状・病気に苦しんでいます。

2本あるX染色体のうちの1本はXistにより不活化されますが、不活Xの中には一部抑制から漏れ動く遺伝子もあります。また pseudoautosomal region (Y染色体とX染色体両方にある、相動性が残されている領域、疑似常染色体領域)が Xistの抑制から外れると本来の1.5倍の遺伝子発現になります。

ことはpseudoautosomal regionにとどまらず、常染色体にもエピジェネティックな変化が生じることから、非常に複雑な遺伝子発現になります。

 

KS患者は生涯にわたって低いテストステロン値を示すことにより、

筋肉量減少、インスリン抵抗性を介したメタボリック症候群、Ⅱ型糖尿病、骨粗鬆症認知障害、静脈性潰瘍、自己免疫疾患など様々な病気に対すリスクが高くなります。

 

不妊治療、泌尿器科、遺伝学、内分泌・代謝、循環器、心療内科、、、診療科をまたぐ総合的な診察と治療が必要ですが、現状は、KSに対する理解が足りているとは言えない状況です。 

このロンドンのクリニックは一カ所で総合的に見てもらえるとのこと。日本でもこのように一カ所で多角的に診察・フォローしてくれる施設ができる事を願ってやみません。

  

Klinefelter syndromeについてのブログ開設

クラインフェルター症候群についての論文やニュースを勉強メモ代わりにまとめることにしました。

660人に1人の割合で起きる、非常にコモンな変異であるのに、生涯にわたってKSと診断されるのは全体の4分の1にすぎないと言われています。

体の不調がKSのせいだとは知らないままに、対処療法を受けても一向に改善されずに苦しんでいる男性が多いはずなのです。

 

最近では男性更年期症状という観点から、テストステロンと様々な疾患の関係が見直されてきています。

もっと早くにKSに取り組んでくだされば、多くの症状が関係していることが分かっていたでしょう。

 

論文やニュースの出版日時をカテゴリータグにして、いつごろの情報かが分かるようにしました。

このページは前書きなので2030年というタグをつけてみました。