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クラインフェルター症候群に対するレビュー

Recent advances in managing and understanding Klinefelter syndrome

Latest published: 28 Jan 2019, 8(F1000 Faculty Rev):112 (https://doi.org/10.12688/f1000research.16747.1)

 

クラインフェルター症候群には、古典的にコレと言えるような表現型がない。非常に症状が重い場合以外は、見分ける指標が無い。

ネットなどで書かれている「高身長、長い手足」は必ずしも一般的ではなく、思春期前の児童の発達の遅延などで見つかる場合もあるが、多くは標準域のなかで成人し、結婚後の不妊治療で診断される。

この診断の遅れが、多くの疾病リスクを抱えるKSにとって大きな問題となる。

 

高身長はSHOXの増加が関与している(SHOXはpseudoautosome領域に存在し、Xistの抑制を受けない)。

 

KS患者は循環器(心臓、血管)、脳内血管、メタボリック症候群など複合的な疾病リスクがある。

動脈弁の奇形、血栓(pulmonary embolism)、末梢血管の病気、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis)、静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism)による死亡率が高い。そのため、KS患者に対する血栓症のスクリーニングが必要である。

心室の拡張期の機能異常、僧帽弁逸脱、頸動脈の内膜の肥厚化もしばしばみられる。エクササイズには注意が必要である。

メタボリック症候群になる率が高い。体脂肪、胴回り、インスリン抵抗性、トリグリセリド、LDLの増加がみられる。

骨密度の低下も多くみられる。

 

KSは胎児時代の初めの数か月でX由来の遺伝子増幅により、精子形成の前段階 pre-spermatogonia の発達が阻害される。

 

末梢血からのgenome-wide DNA methylation and genome-wide RNA-seq が2018年に行われ、その結果明らかになったのは
まず女性との比較では、X染色体に11個の異なるメチル化領域があった。
男性との比較では、常染色体に168個の異なるメチル化領域があった。85個の遺伝子に相当した。

発現パターンでは31個の遺伝子がコントロール男性とは異なり、内訳は23個の常染色体と、7個のX由来のncRNAだった。

X染色体と常染色体いずれにもエピジェネティックな変化が起きていた。

 

エピジェネティックな変化が遺伝子発現と相関しているかどうかは定かではなかった。これがKS患者の示す症状の原因になっているのか、それとも余分なXが存在することによるエピジェネティック制御の乱れから染色体自身が自衛した結果なのかもしれない。

KS患者間に個人差が大きいことは、エピジェネティックなものが関与している事は明らかであり、さらなる研究が必要である。