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クラインフェルター症候群患者の骨ダメージに対してホルモン補充療法の効果を検討した

Long-term effect of testosterone replacement therapy on bone in
hypogonadal men with Klinefelter Syndrome

Endocrine (2018) 61:327–335 doi.org/10.1007/s12020-018-1604-6

 

イタリア。 15名の、これまでTRTを受けていないKS患者と、年齢及びBMIがマッチした健常対照群26名を3年間調査した。(KS患者にはTRTを開始)
もともとKSは57名いたが、30名は既にテストステロン補充をしていた、7名は25歳未満だった、5名は内分泌系の服薬をしていたため、15名となった。
この15名の平均年齢は38.46 ± 9.07 であり、特に思春期の遅れなどを感じず、大きな怪我もなくやってきた。テストステロンは8名がウンデカン酸T(ネビド)筋注、7名が皮膚透過性Tジェルで補充を開始した。

 

3年間に渡り、 ホルモンの測定や以下の項目を測定した。

LS(腰椎) FN(大腿骨)TH(total hip 臀部)のBMD(骨密度)
TBS(海綿骨スコア, trabecular bone score)
HSA(大腿骨近位部の骨強度を3次元的に評価する方法 hip structure analysis)
Android gynoid脂肪質量比 (内臓脂肪と皮下脂肪のバランスの指標)体脂肪率(percentage of fat mass)内臓脂肪組織(visceral adipose tissue) などをDEXA(二重エネルギー X線吸収測定法)によって測定。

 

結果

LS,FN,THの骨密度はKSが有意に低い
TBSは違いが無い
HSAはKSが有意に薄くなっている
テストステロン補充を受ける期間に比例して、LSのみ骨密度が少し改善した
体脂肪はKSが有意に高く、テストステロン補充の効果はあまり認められなかった
TBSとHSAに関してはテストステロン補充の効果は認められなかった
KSと健常者ともに、脂肪率は、TBSに逆相関していた。

 

今のところ、骨の三次元構造の強さと、脂肪組織の逆相関は、脂肪細胞と骨細胞の直接の関係なのか、単なる見た目上の逆相関なのか、分からない。

以前から報告されていたように、テストステロンは骨密度の低下を部分的にしか補えない。

 

KSに認められる骨密度の低下、骨の構造的なもろさなど、性ホルモン以外の他の因子が関与している可能性が大きい。