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前糖尿病段階の患者群に8年にわたってテストステロン療法を施した報告

Testosterone Therapy in Men With Hypogonadism Prevents Progression From Prediabetes to Type 2 Diabetes: Eight-Year Data From a Registry Study

Diabetes Care 2019 Mar 12.
doi: 10.2337/dc18-2388

前糖尿病段階と2型糖尿病(T2D)の患者は、しばしば低いテストステロン値を示す事が知られている。そこで、低テストステロン症状への介入によって、2型糖尿病への進行が抑えられるのかどうか調べた。

 

316人の前糖尿症状(HbA1c 5.7-6.4%)かつトータルテストステロンレベルが 12.1nmol/L 以下を対象とした。

229人は非経口testosterone undecanoate補充、87人は補充なしで、8年間、身体、代謝計測を続けた。

その結果、ウンデカン酸テストステロンを補充されたTグループの HbA1c は 0.39 ± 0.03% (P < 0.0001) 減少した一方、補充を受けなかったグループは、0.63 ± 0.1% (P < 0.0001)増加した。
また、Tグループの 90% は HbA1c <5.7% (正常域)になったが、未補充のグループは 40.2% が2型糖尿病への進行した(HbA1c >6.5%)。

テストステロン補充療法により、糖・脂質代謝も目覚ましい改善が見られた。
triglyceride:HDL 比, triglyceride-glucose インデックス, lipid accumulation product 脂質の蓄積, total cholesterol 総コレステロール, LDL, HDL, non-HDL, triglycerides, and Aging Males' Symptoms (AMS) scale.

未補充のグループでは、上記の値は悪化をたどり、死亡率も、Tグループが 7.4% に対して、未補充グループは 16.1% であった(P < 0.05)。また、死には至らなかったが、心筋梗塞が起こったものが、Tグループでは 0.4%  に対して、未補充グループは 5.7% であった(P < 0.005).

 

論文のイントロに書いてあるが、アメリカ糖尿病協会は2018年に「糖尿病に対するメディカルケアの標準」として、テストステロン値の測定を推奨している。

テストステロンがどのように糖代謝をコントロールしているか、そのメカニズムは、おそらくインシュリン感受性を上げていると考えられる。 24週(約半年)のテストステロン補充療法によって、インシュリン感受性が上がり、体脂肪・体重が減少したとの報告がある。

そして細胞レベルでは、テストステロン補充療法は、グルコースキャリアGLUT4, インシュリンレセプター、インシュリンレセプターサブストレート1の増加を誘導し、インシュリンを介したグルコーストランスポートの能力を強めている。