クラインフェルター症候群と循環器・血栓疾病
MANAGEMENT OF ENDOCRINE DISEASE: Klinefelter syndrome, cardiovascular system, and thromboembolic disease: review of literature and clinical perspectives
DOI: https://doi.org/10.1530/EJE-15-1025
これまでに発表された研究データをまとめたレビュー
メタボリック症候群はKSで多いことが分かっているが、これがテストステロン補充療法で必ずしも改善されないという結果になった。
メタボや体脂肪(特に体幹)の増加は、性ホルモンの欠乏とは別の因子が絡んでいる可能性がある。
可能性として考えられるのが、免疫である。近年肥満と免疫の関係が注目されているが、KSでもこの観点から考える必要があるかもしれない。慢性炎症状態
サイトカインCCL2の過剰発現。CXCL10には違いがない。
糖尿病に関してリスクが1.6ー7倍高くなる。過去のデータではテストステロン補充療法では改善されないという結果になるが、処置がどれくらい適切に行われたのか、どれくらいの期間なのか、この点は今後も検討すべきである。
内臓脂肪過剰蓄積状態において過剰産生される C-reactive protein( CRP)がKSではベースラインが上がっているとの報告がある。CRPは動脈硬化性疾患のリスクマーカーでもある。これはテストステロン補充療法で顕著に低下と報告あり。
レプチンは脂肪細胞で作られる満腹ホルモンであるが、KSでは増加している。
テストステロン補充療法を受けているKSではQTインターバルが短い傾向がある。
Short QT 症候群は 1999 年にはじめて報告され、典型例では著明な QT 時間の短縮(< 300/>ms)と心房細動の合併,および家族性Short QT症候群は心室細動を惹起し,心臓性突然死を来たすとされている。
テストステロン補充療法の注意点である。
KSは心不全のリスクが高く、先天性の心臓疾患を持っている可能性も高い。
血栓症が起こりやすい。難治性静脈潰瘍。
テストステロン補充療法が血栓症に効果があるかどうか、今のところ定かではない。
現在のところ、KSの心臓・血管系疾病は性ホルモンがメインファクターなのかどうか、はっきりしない。どちらかというと、性ホルモンとは別の因子がメインファクターだと著者は考えているが、テストステロンの存在量というより、放出リズムが重要なのかもしれない、と言っている。
内分泌内科等の専門医のフォローアップが必要なのは言うまでもない。